昭和58年、貸金業の規制等に関する法律(現在の貸金業法)が制定された。同法は、貸金業者に対する登録、規制を強化するのと引換えに、貸金業者に対してみなし弁済(みなしべんさい)という恩典を与えるものであった。すなわち、同法43条は次の要件を満たす場合には制限超過利息の支払を有効な利息債務の弁済とみなすと規定している。
みなし弁済が認められると、前記の最高裁昭和39年による元本に対する充当が認められないので、貸金業者は自己の計算どおりの貸金を請求することができ、過払金も発生しないことになる。
判例は、この貸金業法が成立して以来、17条書面・18条書面に当たるかを厳しく解釈したり、「遅滞なく」、「直ちに」という要件を厳しく解釈したりすることにより、借主を保護しようとしてきたが、支払の任意性については、「債務者が利息として任意に支払った」とは、債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上、自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい、債務者において、その支払った金銭の額が利息の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しない(平成2年1月22日最高裁判決)として、緩やかに認める傾向にあった。
しかし、最高裁は、平成16年2月20日最高裁判決の滝井繁男裁判官の補足意見をきっかけに平成18年になって、期限の利益喪失特約(借主が約定利息の支払を怠った場合には期限の利益を喪失し、残元本を一括返済しなければならないとの特約)がある場合には、借主は期限の利益を喪失しないよう支払をせざるを得ないので、原則として支払の任意性がないとの判断を示した(最高裁にて滝井繁男裁判官の補足意見が上田豊三裁判官以外の13名の裁判官の多数意見となった)。消費者金融業者の貸付けには通常期限の利益喪失特約が付されているのでこの判決の影響は大きく、今後、みなし弁済の適用を主張することはほぼ不可能になったといえる。
この判決が一つのきっかけとなって、グレーゾーン金利見直しの論議が高まることになった。
« 3 過払金返還請求訴訟における問題点 | 3.2 過払金の利息 »